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スノースクート バックカントリー 立山 剱岳アタックレポート

地元立山の「剱岳」 五月の残雪時期を狙ってスノースクート バックカントリーにいってきましたよ!

富山県民ならずとも、映画にもなって知名度が高まった「雪と岩の殿堂」といえば剱岳。

富山側からは立山山頂の左に位置する文字通り剣のように鋭いシルエットの山、立山開山伝説でも地獄に見立てられるそんな険しくも雄大な山ですね!

毎朝立山を見上げればそこに在る剱岳、スキーやスノーボードでのバックカントリー滑走記録はもちろんありますが、スノースクートで剱岳というと前人未到。

果たしてたどり着けるのか?さらには山頂から滑れるのか?

ずっと憧れと畏怖の念で見上げていた剱。

立山のバックカントリーの中でも知力、体力、滑走技術が問われる剱岳のスノースクート滑走にむけて少しづつ準備をしてきました。

まずはスノースクートをブラッシュアップさせなくてはと、1グラムでも軽いスノースクートフレームパーツの開発に時間をかけてきました。

ハードな縦溝でも負けないしっかりキャンバーが入ったエッジグリップの効くボードセット、50°を超える斜度でもブレーキングとターンをするためのボードのしなり幅と取り付け方法、、!

最終的にはフルサイズのワイドボードを取り付けながらもスノースクート重量7,5kgまでシェイプアップ。

登るだけでも楽しく険しい山ですが、あくまでもスノースクートで滑るために登ります。

なのでとても大事なのが滑走技術!

凍てついたバーンを滑るターン技術、ジャンプや不整地でのリカバリーワーク。
斜面を滑ってばかりじゃ〜バックカントリーライドは上手くなりません。

1ターン失敗するとなにが起こるかわからない。
そんなハードなコンディションではトリックもパウダーもハンドレールも全て楽しんで得た総合滑走力が活きてきます

登攀の体力、地形図の読み方、アイゼン、バックパック、ピッケルワーク。
限界に近い状態になってもベストを尽くすチームワーク、残雪期の登山家としての技術も大事。

スノースクートの特徴でもあるボードやスキーとは違う「立体的なマシンのような形状」をデメリットからメリットに変えるための登り方、滑り方。

全ての準備ができても果たしてスノースクートとライダーは剱岳で通用するのかどうか?

歴史の浅いスノースクート、色んなスポーツを楽しむ方に教えてもらいライディングに必要な要素を吸収してきました。
この冒険が成功すればスノースクートの山行でもスキーやスノーボードと同等の楽しみが出来るということになる。

全世界のスノースクートライダーにさらなる可能性を感じてもらえる。

20年以上もスノースクートを信じて滑ってきた、いや滑らせてもらってきた我々が行くしかない。
というわけで、トウーレイトスポーツ代表大住と有岡店長の二人パーティでアタック!

 


5/16,17,18と最終的には二泊三日の日程となった剱岳アタック。
今回はもちろん富山側立山駅からのアクセス。

とても雪の少ないシーズンで不安もありましたが、5/15までの剱岳登山は条例で早期の登山届けが必要、天気や状況が読めない中での届けは難しく、5/16という出来る限り雪が残っている最短日程での山行になりました。

立山駅はずっと通ってきた立山バックカントリーへの玄関口、顔見知りの方に応援されながら室堂到着。
雷鳥沢のテント場には五月の半ばでもテントがチラホラ。

テント泊での立山スノースクートバックカントリーも楽しそうと思いつつも、総重量を考えるとまだ自分たちのレベルでは工夫が必要かも。。それはまた次回の楽しみに。


さっそく剱方面に向かうべく雷鳥沢を直登、登り方は「スノースクート肩担ぎ」

このスクートを肩に担ぐという基本的な登り方はとても使い勝手がいいんです。

一般的に考えたらスキーやボードより登るという行為が大変なスノースクート。
足に固定せずに滑れるスクートの特徴を活かすことも大事、肩に担げば疲れたら降ろせばいいし、平坦になれば押して移動、稜線や緩斜面に入ればそのままスケーティング出来るスクートならではのオールラウンドな登り方。

斜度や雪質によってアイゼンやスノーシューをつけることも簡単。
有岡店長はアイゼンのままスクートをスケーティングすることでさらにスピーディな移動を可能にしていました。


スクートを背負わないので休憩も簡単。

バックカントリーというとまずはスノーシューというイメージですが、残雪時期は夜マイナス温度で凍った雪がカリカリバーンを作るので朝一番の行動にはシューよりもアイゼンが大事になってきますね。

スノーシューも爪があるので凍った雪面でも効果を発揮しますが、がっちり冷え込んだ標高3000メートルの山ではアイゼンがないと雪面が固すぎて登れないという事態も起こります。

バックカントリーの危険。雪崩、穴にハマる、ガスで迷子、きっとまだまだあると思いますが

残雪時期の立山のバックカントリーで注意することは「滑落」です。

ゲレンデではありえない斜度の自然地形がカリカリに凍っていた場合、ゲレンデピステンのアイスバーンとは次元が違う危険度になります。

登ってきた斜面を滑る分には登っている段階で斜度感や雪質、岩、クラックの位置などを確認できているのでまだいいのですが、違う尾根から登った場合やトラバースしてきた斜面は「未経験ゾーン」といえます。

山頂や尾根からドロップする最初の1ターンの場所が標高も高く「もっとも斜度があり」「もっとも硬い」ことが多いのでそこでエッジが抜けてしまうと。。あっという間に数百メートルの滑落、運が悪いと大事故となります。

逆にいえば自分の力で登れた斜面は滑りを楽しめる可能性が高い斜面ともいえますね。

ニュースにすらならないここでは日常的な事故、、
油断できない恐ろしいことです。

しかしびびってばかりもいられません。天気が良ければ午前にはシャバ雪に。
山頂尾根沿いはスノースクートを押して散歩気分?

担ぎが基本とはいえ、やっぱりスノースクートは押して移動したいタイプ。
ハンドルに重心をかけてゆっくり登ればストック替わり、
こうやって移動している時は一人じゃない!

スノースクートと自分。どちらが欠けても登れないし滑れない。

7キロ台まで軽量化したスノースクートは見た目に反して軽く、スプリットボードや軽量ツアースキーとはまた違った機動力を持ちます。

シールを剥がしたり、バックパックからつけたり外したりする時間をそのまま登攀に使えるので少人数のスクートバックカントリーパーティは以外と悪くありません。

また、ある程度の斜度やデブリ斜面になると結局どのギアでも担いでアイゼン登攀になる。そう考えればスノートレッキングシューズや登山靴で登れるスクートもそんなに条件が悪いわけではないはず。と自分にいいきかせながらマイスクートとともにハイクアップは続きます。

今回は万全を考えて剱岳を望める剱御前小屋さんに宿泊。

こんな山の上でご飯が食べれたり、山小屋の方の情報を聞いて計画が練れるということはとても強い味方!
御前小屋さんには例年お世話になり大感謝です。


小屋の裏、剱御前からは今回の滑走予定ルートを確認できます。(赤線滑走予定ルート)
ここから滑れそうなラインや沢をチェック!

しかし遠目でみても険しいにもほどがある剱岳。

今日登った方のアドバイスも参考にはなるけど明日は状況が違うかもしれない。
山頂や中腹付近は雪がついていますがボトム周辺は確認できないので登り口である平蔵出会までいってみるしかなさそうです。


アタックに向けて体を休めたいところですが、そういえば今日は登ってばかりであまり滑っていないので
(有岡店長は体調が〜ちょっと休む〜といいながら夕飯まで小屋で寝ていた)

夕飯のあとのお楽しみ。立山のバックボウル別山周辺の夕方ライディング。

陽の当たり方なのか、室堂雄山方面に比べて雪面が綺麗なのが特徴の御前方面

有岡店長の1ターン。

スノースクートでも滑りのスタイルと滑走ラインで魅せるそんなライディング。
1ターンにかける想いと独特の難しさ面白さ。
平らな斜面も感覚を研ぎ澄ませば大きな地形が見えてくる。

バックカントリーならではのターンの熱量!


五月も半ば、陽も長くなっていますが夕日は日本海方面に。

きっと街中からは立山は真っ赤に染まっているんだろうなと想像しながら
明日の剱岳アタックに向けて八時消灯、就寝!


翌日朝5:00

放射冷却でカリカリの剱沢を滑りおりれば剱岳への取り付きとなる出会へ向けて出発準備

果たして雪は山頂から繋がっているのか?
繋がっていてほしいという思いと繋がってなかったら来年に持ち越しだな〜というそれはそれでいいのかも。という恥ずかしくも物怖じする思いが入り混じりつつ

緊張しながらのドロップイン!

やっぱり朝一番はカリカリ〜!
転倒しないように慎重に標高を下げて随分降りてきました。

標高を下げれば雪質も落ちてきます。
カリカリのうえにボコボコバーンですが剱サイドは岩の露出も少なく、この感じだと今日は登れるかもしれない!


そして今回の登攀ライン、平蔵谷到着!

落石あり、デブリあり
ですが雪も十分とはいえないがあり。
遠くに光り輝く剱を見据えながらハイクスタート。

ここで有岡店長はバックパックにスクート取り付け、ダブルアックス、アイゼンというモードに変更、本気具合が伝わります。


大住はある程度まではアイゼンに肩担ぎで直登。

後半必ずスクートを担ぐ必要があると予想して肩担ぎ→バックパックに装着という順番で登りに使う筋肉の負担を抑えるのが狙い。
このあたりの斜度は特別きついものではありませんが、岩と雪のコントラストがあまりにも大胆でふとした瞬間に叫びたくなる孤独に襲われます。

下界は30°近くの気温、山の上でもかなりの日差しで体力が奪われていきます。


登ること数時間。

まだまだハイクは続きます。
中央にちょこんとみえるのが天狗岩、インディアンクーロワールともいわれる今回の核心的ポイント。
その岩の脇を詰めるかこのまま谷を登りきって夏山登山道に向かうか?

今年の積雪量なら登山道が露出しているはず!

出発前に経験の豊富なボーダーの方達にルートバリエーションのアドバイスをもらっていたので、時間的に短縮できると思われる登山道を目指します。

予想通り登山道に雪はなく鎖も全露出。
登山道鎖場、横ばい縦ばいとヘルメット被ってスノースクート担いで、、

山には色んな方がいて岩場すら走り抜けるようなトランスアルプス競技、剱の頂上からパラグライダーで飛んで行った人も??
そこまでじゃないにしてもスノースクートで鎖を握って頂上を目指す、自分たちでも初めての経験すぎてちょっと麻痺していますが、ここまできたらなにが正解かはもはやわからず。

きっと正解も失敗も何通りもあるんだろうと慎重に登っていきます。

今回、登頂のルート選定は迷いましたがインディアンクーロワールから登った場合は、相当な斜度とクラックもありそうでシャバってきた雪のことを考えるとピッケルアイゼンでも流されてしまう可能性が。

登山道を登るルートで正解だったのかもしれません。


そして無事登頂!
体力的にも精神的にも緊張感ある登りから解放された安堵感。

360°見渡せば青い空とグレーの岩、白い雪。

祠の隣にスクート二台並べると狭くなってしまうけど
雪を被った剱の山頂は思いのほか丸かった。

思い起こせば20数年前、、
「自転車みたいななにかで雪の上で滑ったり飛んだりしてる!絶対にやってみたい!」

スノースクートで感動を得た分、滑りやマシンを進化させていく。
そんな経験を共有してライダーみんなで前に進んでいく。

スノースクートはまだまだ小さなコミュニティだから面白い!

時は経ち。
間も無く剱岳山頂からドロップイン。


がしかし、、、立山の神様!この斜度〜〜〜!
(剱のドロップ周辺は50°以上らしいです)

今まで何千本も滑り何十本も登り、
どんな斜面でもターンできるという自信がありましたが、おそるべし剱岳トップ。
斜面に立っているだけでヒリヒリします。

時間もお昼を回り雪質はシャバ雪の範疇に入ると思うのですが
斜度がありすぎて先も見えない!
勢いで滑ると迷路のようになっている岩や高山植物ゾーンで行き止まり。
横滑りですすむと落ちていくスラフ。

転んだらそのまま岩岩、ゲームオーバー
絶対に止まれない。

複合的な難しさで生まれて初めて「これってターンできないかも?」という経験でした。


長次郎尾根と有岡。

あれだけ御前から眺めた斜面も現場に立てば自分たちの座標に自信が持てなくなります。
地形図には出ていない細かい岩場やクラック。

誰か遠くから無線で「そこ右!」「そこ左!」と教えてほしいくらいですがパーティは二人だけ。
滑るのも撮影するのも二人。

登りよりも明らかに強い緊張感。一気に滑りたい気持ちを抑えて
ポイントごとに止まって相談、お互いが納得できるまで考えて判断していきます。

バックカントリーは自己責任?
ここで事故を起こすことは色んな方を巻き込むことになってしまいます。

先ほども書きましたが、登っていない斜面を滑るのは慎重を重ねて。
登山道で登りを短縮した分、斜面判断に迷います。

滑るべき斜面に自分たちの登りの足跡がついていれば気持ち的には落ち着くのですが。。

大住の右ターン。

でも、安全第一だけど自分たちはスノースクートライダーだ!

滑るためにここに来た
今、自分にできる限りのターンを。

ギリギリの急斜面、前後のボードに均等にエッジング
斜度がきついと背中のバックパックの重みがターンに乗ってきてぐいぐい加速していく。

エッジをずらすと凹凸を拾い転倒の危険あり!あくまで一本線のカービングで。

1ターンごとに今まで滑ってきた積み重ねが雪面に溶けていく。

 


有岡店長のインディアンゾーンへの滑り込み。

山頂から滑っていくと選択肢がいくつか!

長次郎谷、大脱走ルンゼなどありますが今回はインディアンクーロワール直下。少しだけ斜度は和らいだ気もしますが、左右幅はどんどん細く上からは見えないクラックあり、中央岩あり(名称不明)でハードコア。

 


平蔵谷までくれば斜度もいくぶん緩み、ようやく安堵感に。
落石をよけながらそして無事ボトムへ。。!

剱岳山頂から二人とも滑りきった。。
必死な瞬間もあったけど思い描いたターンも出来た。

写真や動画は思ったより取れなかった。
劔の斜面でカメラを構えるとそのまま滑落しそうになるから?!

一瞬一瞬が鮮明に思い出されるトップからの一本、
上から下まで滑ることでここまで緊張感があったことはない!

山頂からの滑走は標高差でいうと1000mほどでしょうか。
滑り終えた後は充実感と疲労感に包まれます。

しかし実はここからが試練。。

復路の沢登り返しは剱岳登頂より時間がかかるという噂。
立山バックカントリーは最終バス時間というものがあるのでどうしても帰りは急ぎ足になってしまいます。

有岡店長とも相談、ここまできたら何時になってもいい、山小屋でもう一泊してもいい。
そう思うと焦りもなくなり沈んでいく夕日も余韻の一部になっていく。

沢をゆっくり一歩一歩登っていく間に色んなことが思い浮かんでは消えていきました。

こんなに長距離を登り返したことあったっけ?
林道を延々と歩いた末にほとんど滑れる斜面がなかったこともあったな
有岡店長なら水まだ持ってるはず・・
てんちょ〜みず〜!

スノースクートを頑張って滑っているとスクートライダーはもちろんスキーヤーやスノーボーダーの仲間にも出会えた。
雪山にラインを刻むという概念を教わった。

ハンドルに二枚の板があるからスノースクートだ。
原点はBMXだ!ってトリックのことも自転車のことも沢山勉強した。

どのジャンルでもびっくりするぐらい上手いライダーがたくさんいた。
彼らはそうそう真似できないライディングで「本物」のオーラをビンビンだしてた!!

そんな「本物」にスノースクートで一瞬でも近づきたいと色んなところを滑ってきた。

前例もなければガイドもいない。
今日、自分たちの力でスノースクートで登って滑って

今この瞬間は憧れていた「本物」になれたんじゃないか・・

そんな思い出に残る剱岳アタックになりました。

滑走にあたりアドバイスいただいた方々、応援してくれた家族、そしてもう15年以上前になりますが、何も知らない自分を初めて立山に連れて行ってくれたゲンテンスティック畔田さんにこの場を借りてお礼を伝えさせていただきます。

皆さんありがとうございます!

そして今後もよろしくお願いいたします。

トウーレイトスポーツ
大住 有岡